嫌われる勇気

加糖
ー「断る」ことがもたらす5つのメリットー

プロローグ

「断れば?」

学生時代、たくさんのプロジェクトを同時期に任されていた私が弱音を吐くと、友人はなんともないようにそう言うのだ。イライラしていた私はこう思った。「断れないからこうなってんのよ…」と。断らずに引き受けたのも、自分の時間を削る事を選択したのも、楽じゃない方向を向いたのも、全て自分なのに、自分は被害者だと言わんばかりにイライラを撒き散らす…私はなんて迷惑な人間だったのだろうか。

いま冷静になって考えると、友人は正しいことを言ってくれていたんだと理解できる。断ればすべて解決する。だけどそれが出来ない。「断る」ってすごく体力を消耗する。空気が読めないと言われないように、失礼だと思われないように、と多方面に気を遣って最大限の申し訳なさそうな表情を浮かべ、時にはバレない嘘をついたりなんかして。「断らない」のは地獄だけど「断る」のも地獄。人間関係においてこれらの地獄コンボは避けては通れないのだろうか。

今日の読書録は「嫌われる勇気」から考える「断ることがもたらす5つのメリット」

本書はアドラー心理学に基づいて「どうすればいい対人関係を築けるか」「幸福とは何か」を教えてくれる。私はこの本を読んで「断る」ことが難しいのは嫌われる怖さが原因であることを知り、それは嫌われることに対する捉え方を変えて、受け入れる勇気を持つことで克服できるということを学んだ。そして同時に「断る」ことに対する印象が大きく変わった。「断る」ことは自分にも周りの人にも良い影響を及ぼすメリットがたくさんあったのだ。今回の読書録ではそのメリットを5つにまとめた。断る怖さを受け入れる勇気が身に付き、より良い人間関係を築くことができるだろう。

「断る」ことがもたらす5つのメリット

「断る」ことに対してマイナスな印象を抱いていたが、それは大きな勘違いだった。実は「断る」ことができるようになると、人生をより良くしていけるというメリットがあるのだ。

「断る」ことがもたらす5つのメリット
  1. 相手との関係を深めることができる
  2. 居場所を見つけることができる
  3. 信頼される
  4. 生きやすくなる
  5. 人生が充実する

①相手との関係を深めることができる

「お世話になってるし…」「いつも奢ってもらってるし…」と意識下で上下関係を作り、自分で断るハードルを高くしてしまってはいないだろうか。受け取った恩に対して、自分が嫌なことを断らずに受け入れることは礼儀でもなんでもない。それはそれ、これはこれ。全く別問題だ。相手に合わせておけばうまくいくと思って黙って受け入れていても、自分が窮屈な思いをしている時点でそれはうまくいっているとは言えない。「断る」というのは自分を知ってもらって、相手との関係を深めていくチャンス、そして真にうまくいくチャンスだ。自分と相手の意見を擦り合わせて、お互いとって丁度良い選択肢を生み出していくことがより良い人間関係を築く方法なのだ。

②居場所を見つけることができる

「断る」ことでイジメられたり孤立して自分が辛い目にあったら、苦しさに潰れてしまう前に「ここは自分が居るべき場所じゃなかったんだ」と思って早々に離れるといい。離れた方がいい。私たちは一度組織下に入ればそこでしか生きていけないような気持ちになるが、想像しているよりも世界は広く、様々な組織がそこらじゅうにゴロゴロと転がっている。そしてその中のどこかに、自分が主張した意見を受け入れ、誠意を込めて意見を返してくれる人が必ずいる。そこが自分の居るべき正しい居場所だ。「断る」というのは自分が居るべき場所を見直し、自分が幸せになれる場所を見つけていく一つの手段だ

③信頼を得られる

いつもニコニコして自己主張しない人は、嫌われないけれど信頼度は薄いかもしれない。何を考えているか分からないからだ。職場の人でも友人でも人間関係を築くうえで信頼は必須。肯定的なことしか言わない人には「本当にそう思ってる?」と疑いたくなるし、「気を遣われているのかな」と距離を置かれてしまうかもしれない。仲を深めたいから「NO」と言わなかったのに、これでは逆効果だ。「断る」ことができる人は、自分の意見を持っている人。すなわち嘘をつかない人。嘘をつかずに向き合ってくれる人は自然と周りから信頼されるようになるのだ。

④生きやすくなる

私はいつも「断る」ことを躊躇っていたが、何度か断る体験を成功させると「あれ?こんな簡単なことでよかったの?」と思えるほど「断る」ことに対してのハードルがグンと下がった。例えば、大人数での飲み会が苦手で参加できないと断ると次からは少人数の飲み会にのみお誘いがくるようになったし、資格の勉強がしたいから遊びに行けないと友人の遊びの誘いを断るとみんな応援してくれて、遊ぶ時間を短くする提案もしてくれた。驚くべきことに大抵の人は断ることをアッサリ受け入れてくれるのだ。嫌々笑顔でいる時間や渋々受け入れている苦痛が無い、そのうえ私が望む世界線がどんどん作られていく。「断る」ことが生きやすい世界を作ってくれたのだ。

⑤人生が充実する

気の進まないことを断れるようになると人生の充実度が上がる。無駄なストレスから解放されるのはもちろん、自分の意思で人生を進めているという自覚が芽生えるため、嫌なことが起きても「これは私が選んだ結果だ」と受け入れられるようになり不平や不満を持つことがなくなる。そして、やりたいことや好きなことに時間やお金をかけられるようになるので、毎日を全力で楽しむことができる。こんなに最高な生き方はない。他者に嫌われるかもしれないという不安に乗っ取られて、本当に大切なものや大切な人を蔑ろにする人生は避けたい。

おわりに

「断る」というのは自分の意見を伝えるということで、決して悪いことではないのだ。丁寧に、思いやりを込めることを忘れなければきっと意見を受け入れてくれる。そして断ったことで訪れる孤独は「自分の人生を生きる」ために必要な痛みだということも忘れないでおきたい。勇気を持ってそれを乗り越えられたら自ずと孤独ではなくなる。上手に意見を伝える技術を磨くのはより良い人間関係と自分の幸せを築いていくためにとても大切なことなのだ。

書籍の紹介

最後に、今回の読書録「断ることがもたらす5つのメリット」を考えるきっかけとなった書籍を紹介する。

  • 書名:嫌われる勇気 自己啓発の源流「アドラー」の教え
  • 著者名:岸見一郎・古賀史健
  • 発行所:ダイヤモンド社

私たちの悩みの大半を占めるのは人間関係の問題についてだと思う。それは複雑でセンシティブなものであるため解決するのは難しいと思い込んでいたが、この本はその鬱蒼とした茂みを一つずつ取っ払い、シンプルな考え方ひとつで解決できるということを気づかせてくれた。また、励ましや寄り添いだけでは乗り越えられないような、胸の奥にある過去のトラウマや未来への恐怖に対しても具体的な解決策・考え方を示してくれるので非常に有用性が高い本だと感じた。読者に光の道へと導いてくれる、「生き方のハウツー本」だ。

「承認欲求を満たすことが苦しくなっている」「幸福とは何かを知りたい」「自分の存在価値に悩んでいる」という人にも是非読んでほしい。

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加糖(かとう)
加糖(かとう)
フリーター
読書と考え事と甘いものが好きな人。
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