ほっといて欲しいけど、ひとりはいや。
ー「健康的な人間関係」の築き方ー
プロローグ
大好きなケーキを頬張ったり、推しに活力をもらったり。帰り道に見上げた月がきれいとか、明日からは三連休だとか、喜びの瞬間は日常にたくさん転がっている。しかしそういう喜びは花火のようにパッと華やいで、すぐに消えてしまうように感じる。時間が経っても心を満たしてくれるものというのは、人からもらった思いやりや、助けや、気遣いに対する喜びではないだろうか。そしてそれを裏返すように、人からもらった嫌な事は、鎌で抉られたようにずっとずっと深い傷が残る。もう二度と回復できないんじゃないかと思うくらいには重症。明日の仕事を休まなければいけないくらいの緊急事態だ。
人に何回失望させられても、それでもやっぱり人が好きだと思ったりして、そんな自分の中の人間好き嫌いサイクルに戸惑い続けている。人間関係を築くのは予測不能な障害物競争のようで正直苦手。人との関わりを絶てばラクになれるのではないかと考えた事は幾度となくあるが、私たちはどうしたって一人では生きていけないようで、息も絶え絶え、足を引きずりながらなんとか今日まで走ってきた。
今日の読書録は「ほっといて欲しいけど、ひとりはイヤ。」から考える「健康的な人間関係の築き方」。
本書は健全な人間関係を築くための考え方を、優しい絵と共に教えてくれる。私は本書の読書を通して人間関係に疲れないためには自分にとっての適正な人との距離感を作ることが必要なのだと学んだ。そして実際に、健康的な人間関係を築いていくのに必要な「適正な距離感」を作る方法をいくつか考えた。今回の読書録ではそのことについて詳しくまとめておく。
「健康的な人間関係」の築き方
いくつになっても難しい人間関係。どう向き合っていけばいいのだろうか。その対策と対処法を知る前にまずは人間関係に疲れてしまう原因をまとめておこう。
- 応えようとし過ぎて、自分の限界を超えてしまった
- 合わせようとし過ぎて、不満がたまってしまった
- 受け入れようとし過ぎて、いっぱいいっぱいになってしまった
人間関係はお互いの心の器に自分の持ちうる愛情を注ぎ合うことで成り立つ。人間関係に疲れを感じた時は、愛情を限界いっぱいに注ぎきって心の器が空っぽになってしまった状態。つまり、注げる愛情が回復するまでお休みしなければいけないという緊急事態なのだ。応えようとしたのも、合わせようとしたのも、受け入れようとしたのも全部愛情。それが間違っていたなんてことはない。ただ、愛情を注ぐ適正な量…「健康的な人間関係の築き方」を知らなかっただけ。
ではここから「健康的な人間関係の築き方」を知って、心の緊急事態を回避していこう。
- 自分の中の「当たり前」を考え直す
- 「充電期間計画」を立てる
- 「心の声日記」をつける
- 「ご褒美」を楽しむ
①自分の中の「当たり前」を考え直す
「メッセージはなるべく早く返信しなくちゃ」「友だちのSNSに反応しなくちゃ」「上司の期待には応えなくちゃ」「友だちだから意見は合わせなくちゃ」「家族だから受け入れなくちゃ」。こんなふうに、愛情をフル回転で注ぎ続け、たとえ自分が疲れていたり気乗りしなくても周りを気遣うことが多くなってしまうという場合、「相手は大切な人だから、応えて、合わせて、受け入れないといけない」という固定概念を考え直す必要がある。
まずは自分の心の器をよく観察する癖をつける。自分はどのくらいの愛情なら注いでも疲れないのか、どのくらい注いだら疲れてしまうのか。そして「これぐらいだったら大丈夫」なラインを守りながら少しずつみんなに愛情をおすそ分けしていく。相手が大切な存在だったとしても、すべてに応えて、合わせて、受け入れる必要はない。そして相手を大切にしたい気持ちと同じくらい自分にも関心を向けて大切にするのを忘れないことが大切だ。
②「充電期間計画」を立てる
マシーンをフル稼働させ続けているとすぐに故障してしまうように、人間も心と体を常に動かしていると参ってしまう。そのため、カラカラの心の器をまた満タンにすべく充電期間を設ける必要がある。「この日は絶対に人に会わない」とか「この日は絶対にマッサージを受けに行く」とか、仕事のスケジュールを入れるように心と体を休める日の予定を決めるのだ。疲れ果ててからでは少し遅いので、先の予定を見通して「自分が疲れそうな日」の直後に充電日を設定するのがベストタイミング。
③「心の声日記」をつける
「心の声日記」とはその日感じたことを紙にたくさん書きだすこと。書き終えた後、モヤモヤした気持ちがスッキリすると共に、「なぜ自分はあの時嫌な気持ちになったのか」という課題と「次からこう対処してみるのがいいかもしれない」という解決策が見つけられるので人付き合いが少しずつうまくなっていくというメリットがある。暗い感情よりも明るい感情をよりたくさん書けるのが理想だが、暗い感情が多くなっても大丈夫。とにかく軽い気持ちで、ノートの切れ端などに思ってることを全部吐き出してみるといいだろう。
④「ご褒美」を楽しむ
週に1度は、難しい人間関係を生き抜いてきた自分にご褒美をプレゼントする。ここで注意したいのが、このご褒美は「もう最悪!」「うああ辛い!」といった強い感情を掻き消すためのものではないということ。「今週もいっぱい愛情注いだなぁ。よく頑張りました、私」と、自分を抱きしめてあげる気持ちでご褒美を楽しむのが大切だ。物をたくさん買ったり、暴飲暴食するのは一時的な快楽が得られるが後でちょっぴり虚しくなるし、人間関係に嫌な印象を残したまま終わってしまう。起きた出来事を無かったことにしようと衝動的に動かず、ゆっくり時間をかけて受け入れて「色々あったけど、今幸せだからいっか」と笑って過ごしていけると心にも体にも健康的だ。
おわりに
人がそれぞれ違う顔や名を持つように、対人関係によって受ける影響のキャパシティも人それぞれ違う。自分の心の器の容量をよく知り、空っぽにならないように、壊れないように、大事に大事に愛情を注いでいけるようになりたい。
書籍の紹介
最後に、今回の読書録「健康的な人間関係の築き方」を学ぶきっかけとなった書籍を紹介する。
- 書名:ほっといて欲しいけど、ひとりはいや。
- 著者名:ダンシングスネイル
- 訳者名:生田美保
- 発行所:株式会社 CCCメディアハウス
白とも黒とも言い切れず自分ですらどうしたいのか分からない。そんな曖昧な感情を整理して受け止めやすくしてくれる。人間関係に悩んだ時は、周りにたくさん人がいたとしてもどこか孤独で「誰にも私の気持ちは分からない」と卑屈になってしまうことがある。そういう時にこの本を読めば、誰もが同じような悩みを抱えていて、自分がおかしいわけじゃないんだとホッとできるはず。この本は悩みを共有して支えてくれる親友のような、心強い味方になってくれる。
「寂しさとどう向き合っていけばよいか知りたい」「人に執着してしまうのをなんとかしたい」という人にもおすすめしたい。