愛とためらいの哲学
ー恋愛ためらいモードを解消する3ステップー
プロローグ
喧嘩はするし、自分の思い通りにならないし、関係に終わりが来るかもしれないし、振り向いてもらうために努力しなければいけない。恋愛って超めんどくさい。おひとり様歴の長い私は自由気ままに生きることにすっかり慣れてしまい、恋愛に対してそのように思ってしまう。
でも本音を言えば、羨ましい。喧嘩できる相手がいて、理解しようと努力できる相手がいて、離れたくないと思える相手がいて、綺麗になろうと思わせてくれる相手がいて…いいなぁ。そう思うのに、友人らに好きな人ができたり、恋人ができたり、はたまた結婚したりする姿を見れば見るほど、恋愛や結婚に対する拒絶感が強くなってきている気がする。羨ましいのに遠ざけたい。天邪鬼なのだろうか。そんな矛盾がほんの少し、苦しい。
今回の読書録は「愛とためらいの哲学」から考える「恋愛ためらいモードを解消する3ステップ」
本書では人間関係の「恋愛」という非常に難解な部分を、感情論ではなく心理学や哲学といった知を通して、理論的に学ぶことができる。その学びの中で、恋愛をためらってしまうのは「自分の気持ち」や「自分の愛し方」など自分自身ときちんと向き合えていないことが一つの要因だと気がついた。自分と向き合うことができれば恋愛をためらうことから解放され、パートナーともしっかりと向き合い良い関係を築いていける。その手順を3つのステップにして以下にまとめた。恋愛を拒絶することなく、楽しめるようになるだろう。
恋愛ためらいモードを解消する3ステップ
恋愛をためらうときには「でも…」「だって…」と心にストップをかける理由があるのではないだろうか。以下が私の恋愛ためらいモードになる理由だ。
- 恋愛向きの性格ではない
- トラウマがあって恋愛に積極的になれない
- 理想の相手になかなか出会えない
自分の心の引っ掛かり部分が挙げられたら、3つのステップに沿って恋愛へのためらいを解消してゆく。
恋愛をためらう理由に「いい部分」を見出し、恋愛に対してのネガティブな気持ちをポジティブに変えてゆく。
自分の中の常識や思い込みを取っ払って、恋愛に対しての壁を薄くしてゆく。
パートナーは他者であり協力者であることを知り、良い関係を築く努力をしてゆく。
では実際に、先にあげた「恋愛ためらいモードになる理由」を例に恋愛ためらいモードを解消し、パートナーとより良い関係を築いていこう。
ケース1:「恋愛向きの性格ではない」
私は一人で過ごす時間が好きだ。人が嫌いなわけではないが、対人関係で疲れてしまうことが多いために一人の時間を存分に楽しむことで英気を養っている。そして一人時間を楽しむあまり連絡不精になりがちで、執着しない性格も相まって相手を不安な気持ちにさせてしまう。私はどうも「恋愛向きの性格ではない」ようだ。
- 一人で過ごす時間が好き
- 連絡不精
- 執着しないドライな性格
STEP1:メリットを考える
一人で過ごす時間で、自分磨きができる。自分がレベルアップしていくと嬉しいし、その姿は相手にもより魅力的に映るだろう。また普段のやり取りが少ない分、二人で過ごす時間がとても貴重なものとなり、大切にしたいという気持ちがより一層強くなるというメリットがある。
STEP2:自分と向き合う
絵の知識が無くたって美術館を楽しめるように、恋愛に比重が無くたって恋愛は楽しめるし、楽しむ権利がある。だから、一般論やパートナーに合わせて無理に自分の生き方を変える必要はない。自分の恋愛の形を知り、これでもいいのだと自分自身で認めることが大切だ。
STEP3:パートナーと向き合う
パートナーとはいえ、相手は他者。自分と違って当たり前だ。自分が「自分の恋愛の形」を持っているように、相手にもそれは存在する。だから自分を認めるように主張するばかりではなく、相手の意見もしっかり聞いて、理解しきれ無くても寄り添う姿勢を忘れないでいたい。
ケース2:トラウマがあって恋愛に積極的になれない
大好きな人に勇気を出して告白したけれど受け入れてもらえなかったり、信じていた人に浮気をされたり、恋愛は幸せなことばかりではない。世界中の幸せが敵に見えてくるし、自分に自信がもてなくなってくる。恋愛は喜びも大きい分、悲しみも大きく、その心の傷はなかなか癒えるものではない。その「怖さを知っているから恋愛に積極的になれない」でいる。
- 酷いフラれ方をしたので、また傷つくのが怖い
- 浮気をされた経験から、誰に対しても常に疑うようになった
- うまく恋愛をする自信がない
STEP1:メリットを考える
傷つけられた苦しみや悲しみを知っているというのは、相手を同じように傷つけないという思いやりの手段を知っているということ。また慎重さを重視することで、感情をぶつけ合ってお互いの心がすり減るような激しいコミュニケーションをすることはなく、丁寧に愛を重ね合えるお付き合いができる。
STEP2:自分と向き合う
恋愛で傷つくと「自分に価値がないからだ」と自分を否定したり「すべて相手が悪いんだ」と相手を否定したり悲しみや怒りに包まれて先が見えなくなることがある。そういう時は一歩引いた客観的な視点で解決していこう。
まずは自分は十分に愛される価値のある素敵な人間であると知ること。自己否定の気持ちがあると相手の機嫌を取ろうとしてしまい対等な関係を築けなくなる。自分を認める自己受容とはなんだか小っ恥ずかしくてむず痒い気持ちになるが、相手に誠実でいるためにまず自分に誠実でいる必要がある。
そして次に自分に原因がなかったかを考える。相手に100%非があるように思えても、1%は自分にも改善するべきところがあるかもしれない。辛いことがあったけれど、そのおかげでもっと素敵な人間になれると前向きに捉えて成長していくことができれば、より良い恋愛ができるようになるだろう。
このように、恋愛では「自分がいかに愛されるか」にばかりにこだわらず、「自分の愛し方」にも注目することが大切だ。
STEP3:パートナーと向き合う
自信を失い、不安ばかりが大きくなると永遠に自分だけを愛してくれるパートナーを求めたくなる。その願望が間違った行動に現れてしまってはいないだろうか。わざと相手を嫉妬させたり不安な気持ちにさせて、それでも自分を愛してくれるかといった試し行動をしたり、相手の行動を常にチェックして束縛したり。それは愛する故の行動ではなく自分のことしか考えていない身勝手な行動だ。
どれだけ傷ついた過去があっても、それは「過去」の話。自分にできることは「現在」目の前にいる相手を信じることだけだ。必ずうまくいくことが約束された恋愛は存在しないことを知り、覚悟を持って愛する努力を続けたい。
ケース3:理想の相手になかなか出会えない
自分の理想と100%ピッタリの相手と出会えるまで諦めたくない。そんな強めのハングリー精神は持たないようにしているが、それでも職場の人や身近な友人にはいまいちピンとこない。いつか良い出会いがあるはず。まだその時が来ていないだけ。きっとそうに違いない。そう思い続けて自分から積極的に動くこともできずにいる。
- 家と職場の往復しかしていないので出会いがない
- マッチングアプリは怖くて使えない
- 恋愛を始める時間を考えると億劫
STEP1:メリットを考える
身近な人たちにピンとこないのは関係性の慣れであり、安心感の表れだと捉えることができるだろう。彼らは性格や仕事の事情など「自分のことを理解してくれている」し、「信頼できる」。恋愛において欠かせない理解や信頼がすでにあるという部分は見逃してはいけないメリットだ。
またマッチングアプリにおいても先入観のせいで早期除外してしまっていたが「短時間で手軽」に、そして「気楽に恋愛を始められる」というメリットがある。効率よく恋愛がしたい、今更恋愛の始め方が分からないという時は、恋愛を手伝ってくれるサービスを利用するのはとても有効だろう。
STEP2:自分と向き合う
「こういう出会い方はしたくない」という強い気持ちがあるのなら、それは尊重した方がいい。しかし「面倒」や「億劫」という理由から自分の考えや行動を全く変えず、受け身の姿勢でただジッと待っていると、何も起こらないまま時間は瞬く間に消え去ってしまう。「メリットを考える」という段階で自分の考えを柔らかくして視野を広げたあとは、実際に自分から行動していくことが必要だ。
STEP3:パートナーと向き合う
良い出会いとは理想とピッタリの相手と出会うことではないし、良い恋愛とは誰もが羨むようなドキドキやときめきを感じられることではない。恋愛で勘違いしてはいけないのは自分の欲求を満たすために相手が存在するわけではないということ。理想とは違っても、ときめきは無くても、自分のことを大切に思ってくれる人や自分らしさを大事にできる人は本当に貴重な存在。彼らを必ず恋愛対象に考えるべきだとは思わないが、彼らとの関係を無下にしないようにしたい。人を大切にできる人には、必ず良い縁が巡ってくる。
さいごに
今回、自分の中の思い込みを改め、自分と向き合い、パートナーと向き合うという段階を通して恋愛に感じる壁を取り除いてきて、良いパートナー・良い関係・うまくいく恋愛は降ってくるものではなく、自分たちが意識的に目指して掴みにいくものなのだと感じた。
やはり恋愛にはとてつもない労力を要するのだ。それでも、その労力を背負いながら前を向くことへの憧れは捨てきれない。私はみんなより少し、恋愛と距離が遠く不慣れなだけ。それでも恋愛をしたって構わない。そうやって自分のことを認めて、ためらいの殻を少しずつ脱いで自分なりの恋愛を楽しんでいけたらいいなと思う。
書籍の紹介
最後に、今回の読書録「恋愛ためらいモードを解消する3ステップ」を考えるきっかけとなった書籍を紹介する。
- 書名:愛とためらいの哲学
- 著者名:岸見一郎
- 発行所:株式会社PHP研究所
恋愛は感情によって成り立つ物だと考えがちだが、決してそうではないのだと理論的に「恋愛」という事象を教えてくれる書籍だ。フィクションに影響を受けて、悲劇のヒロインぶりたかったり、ドラマのような劇的な出会いを期待してみたりと恋愛に甘い夢をみがちな私にとって、心ではなく「頭で」恋愛について考えるのはとても新鮮な経験だった。夢のような恋愛の妄想に浸るのもそれはそれで楽しいが、現実的に考えてみるのも大事だと思った。
「何故か恋愛がうまくいかない」「パートナーとの仲をより良くしたい」「新しい恋を始める勇気が欲しい」という人にもおすすめしたい。